【2020年1月】スペシャルインタビュー
三浦 於菟(みうらおと) 先生
冷えは万病の元
レインボーは、温活、腸活、美活に力を入れています。しかし、何といっても原点は温活です。そして、独自に開発したPDPがレインボーの根幹をなしています。新年を迎えるにあたって、改めて「冷え」をテーマにしました。冷えを予防、改善できるのは西洋医学ではなく東洋医学です。そこで、長年にわたって東邦大学大森病院教授として多くの冷え性患者を治療してこられた三浦於菟先生にお話をお聞きしました。
寒くなってきましたが、冷え症で悩んでおられる方がクリニックへおいでになりますか?
冬になってからというより、秋になると冷え症の患者さんは増えていきます。女性のほうが多く、世代は若い方から高齢の方までさまざまです。冬には体に悪さをする「寒邪」に気をつけなければなりません。寒邪の影響で冷え性になります。冷え性には、気温が低いため、その影響を受けて体が冷える場合と、体のエネルギーである気が不足する場合があり、冷え性はそれらが複雑に絡み合って起こると漢方では考えているのです。
なぜ女性に多いのですか?
冷え性は女性でも痩せている方に多い傾向があります。やはり筋肉の量の違いでしょう。筋肉は体の中で熱を作り出しています。筋肉量が少ない女性、しかも痩せている方は、それだけ熱の産生量が少なく、低体温であったり冷えを抱えていたりするわけです。
東京の場合、生活習慣も悪影響を及ぼしています。冬であっても室内や電車の中などはとても暖かく、温めすぎといっても過言ではありません。よって、みなさんどうしても薄着になりがちです。ところが、気温は低いわけですから、いったん外へ出ると急激に体は冷えてしまいます。室温を上げるのではなく、衣服の枚数で調節するといいでしょう。
冷え症の自覚症状はどのようなものでしょうか?
手足の先が冷たくなる、唇が紫色になる、トイレに何度も行くなどは目安になるかもしれません。ただし、これは一例にすぎず、冷え症はさまざまな不定愁訴を伴います。多くの患者さんが訴えるのは、動悸、めまい、耳鳴り、頭痛、肩こり、微熱、イライラ、全身倦怠感、不眠、慢性便秘などです。もちろん、冷え性が原因となって起こる病気は少なくありません。
冷え性と美容の関係はどうでしょうか?
漢方には、「美人を見たら当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」という言葉があります。ここで言う美人とは、色白でもち肌のことです。雪国では日照時間が短いので色白になりやすく、肌に潤いがあるともち肌になりますが、体内に水分が滞り、むくみやすくもち肌に見えます。まさに冷え性が原因ですが、これには漢方薬の当帰芍薬散がよく効くことから、「美人を見たら当帰芍薬散」と言われるようになったのです。また、むくみはなく、皮膚がカサカサと乾燥する場合も冷え性によって引き起こされている可能性があります。そのときには、温経湯(ウンケイトウ)が効果的です。
冷え性に対して、漢方薬以外の予防、改善法を教えてください。
食事や運動、ストレスの解消など、さまざまな方法がありますが、何より体を温めることです。先ほど薄着の問題点を述べましたが、特に足を冷やしてはいけません。足を温めるレッグウォーマーを使うといいでしょう。
また、体を芯から温めるにはやはり入浴です。肩までお湯につかるのが基本ですが、ついつい長湯をしてのぼせたり、心臓が弱い人は水圧によって悪影響が出たりするので、手軽にできる足湯をお勧めします。
寝るときは、布団の素材自体で体を温めるものがよく、電気毛布は感心しません。電気毛布を使うのなら、布団を温めるために使って、寝る直前にはスイッチを切ってください。
最後に、冷え性に関する先生のお考えを聞かせてください。
以前、オックスフォード大学の教授が来日されたとき、通訳から「冷え性は英語で何と言うのですか」と聞かれたことがあります。英語に冷え性という言葉がないのです。西洋人は、冬だから冷えるのは当然と考えます。つまり、西洋には冷え性という概念もありません。
一方、日本人は、体の冷えを病的な状態と考えてきました。よって、冷え性によるさまざまな不定愁訴や病気を改善することができるのです。このように漢方の考えがあるから、西洋人よりも優れているといえるでしょう。みなさんも日本人の知恵を生かして冷え性の予防、改善に努めてください。
三浦於菟先生プロフィール
1947年山梨県生まれ。東邦大学医学部卒業後、東邦大学第二内科、 国立東静病院内科勤務。南京中医学院、中華民国中国医薬学院へ留学。帰国後、日本医科大学東洋医学科助教授、日本女子大学非常勤講師、東邦大学大森病院東洋医学科教授を経て、現在、東邦大学大森病院東洋医学科客員教授、吉祥寺東方医院院長。医学博士、日本東洋医学会専門医、日本東洋医学会指導医。