【2016年11月】特別インタビュー
三橋 美穂 (みはし みほ)先生
布団の中を暖かく
保つことがベスト
これから寒くなると体調を崩す人が増えてきます。 体調を整えるために充実した睡眠は欠かせません。本来、新しい一日は快眠から始まります。快眠セラピストとして多くの人たちの不眠の悩みを解消し、安眠へと導いてこられた三橋美穂先生に寒い冬を元気に乗り切るための快眠術についてお話を伺いしました。
中高年の不眠
中高年の方はどのような睡眠障害に悩んでおられますか?
忙しい方はなかなか睡眠時間が取れないと言われます。男女問わず、寝つきが悪い、眠りが浅いと言われる方も少なくありません。お酒を飲んで寝ると、3時間ほどすれば交感神経が優位になり、目覚めてしまいます。お酒は寝つきがいいとされていますが、結果として質の悪い睡眠になることを知っておいてください。
働いている女性はやはりストレスを抱えていますが、子育てが終わった方やリタイヤした方は、布団の中にいる時間が長くなり、かえって眠れないと感じるようです。睡眠時間は6時間で足りる人が増えますが、8時間以上、寝床にいる人が思いのほか多いのです。
こういった場合は、遅寝早起きをして、寝床にいる時間を短くするといいでしょう。これを睡眠時間制限法と呼んでいます。
不眠を招く体の冷え
体の冷えは不眠と関係がありますか?
加齢とともに体は脂肪が増え、筋肉の量は落ちていきます。体の熱を生み出すのは筋肉なので、筋肉が減ると、体が冷えてしまい、夜中に何度もトイレに起きるようになりかねません。
中高年になると、寝ている間にこむら返りを起こして痛みで飛び起きる人もいます。これは冷えと水分不足が重なることが一因です。明け方に体温は下がっていきますから、この時間帯にこむら返りはよく起こります。
体の表面だけでなく、深部体温も重要です。手足が冷たいと体の深部に熱がこもり、熟睡できません。
布団の中を暖かく
眠るときの冷え対策はどのようにすればいいでしょうか?
やはり暖かい環境で寝ることです。特に布団の中の温度は33℃、湿度は50パーセント程度が快適とされています。室温が低いときは、厚めの布団でもいいでしょう。私は軽くて暖かい羽毛布団をお勧めしています。
布団の中が寒いと、布団に入ったとき筋肉が収縮し血流が悪化しますから、体は冷える一方です。布団乾燥機を使って布団を温めておいたり、背中や腰などが当たる部分を事前に湯たんぽで温めておいたりするのもいいでしょう。
朝、特に体が冷える人にお勧めするのは、起床後の足湯です。43〜45℃の少し熱めのお湯で5分ほどをめどとします。
こむら返りにはレッグウォーマーが効果的です。靴下を履くなら締めつけない靴下がいいと思います。もし、夜中に目覚めたら、水分を取ることも忘れないでください。 お腹が冷たく、内臓が冷えていると思われる人は腹巻きを常にすることです
冬は背中側の断熱
これからの冬はどうすればいいでしょうか?
屋外の冷気は窓から伝わってきて、それが床へ下がっていきます。よって、布団の下から冷えてくるのです。そこで、敷布団を断熱しなければなりません。ダンボールやアルミシートを敷布団の下に敷いてもかまいません。
背中には自律神経が走っていますから、背中側を温めるとリラックスします。
電気毛布は肌が乾燥することがマイナス面です。また、布団の中が暑くなり過ぎると、深部体温が下がらず熟睡できません。ただし室温にもよるので、10℃以下の寒い寝室なら、弱めに使うといいでしょう。
睡眠に対する意識改革
睡眠の習慣で気をつけることは何でしょうか?
午後10時から深夜2時までの間に成長ホルモンが分泌されるので、その時間帯は寝ていなければならないという考え方がまだあります。しかし、それは間違いです。深く眠りさえすれば、成長ホルモンは分泌されることがわかっています。
それでも12時までには就寝するように心がけてください。他のホルモンで分泌ピークが時間帯で決まっているものもあるからです。目安となる睡眠時間は、25歳で7時間、45歳で6時間半、65歳で6時間といわれています。寝つく前と起きてから床の中にいる時間を30分足した時間が、寝床で過ごす時間と思ってください。夕方以降のうたた寝にも注意しましょう。
もし、「明日は来ない」としたらどうしますか。たぶん眠らないのではないでしょうか。睡眠はただ疲れを取るものではありません。明日のために眠るのです。快眠によってもたらされた清々しい朝を迎えている自分をイメージしながら、眠りについてみてください。意識が変われば眠りも変わります。
三橋美穂先生プロフィール
快眠セラピスト。睡眠環境プランナー。 寝具メーカーの研究開発部長を経て2003年に独立。 全国での講演活動や、ベッドメーカーのコンサルティング、 ホテルのコーディネイト、快眠グッズのプロデュースなど、 企業の睡眠関連事業に携わる。 『驚くほど眠りの質が良くなる快眠メソッド100』(かんき出版)などの著書や テレビ出演も多数ある。