【2016年9月】特別インタビュー
杏仁 美友 (きょうにん みゆ)先生
血行をよくする食材はコレだ!
偏った食生活を続けていると生活習慣病になってしまいます。食事によって病気になるなら、食事によって病気を予防、改善し、健康になることも難しくありません。 その有力な方法が薬膳です。今回は、薬膳のスペシャリスト・杏仁美友先生に誰でも簡単に始められる薬膳についてお話をお聞きしました。
自分にあったものが薬膳
薬膳とはどのようなものですか?
薬膳とは中医学の理論をもとにした食材を用いる料理のことです。栄養素やカロリーなどを考える栄養学とは一線を画しています。
五味、五性、帰経の3つの特徴を食材に当てはめることが基本です。 食材には体を温めるものと冷やすものがあります。熱、温、平性、涼、寒とその段階を表すのが五性です。 五味は、酸味、苦味、甘味、しょっぱい味、辛味を酸、苦、甘、鹹(げん)、辛で表します。
その食材が経絡を通じて腎や脾などの臓器に効くかを表しているのが帰経です。
あらゆる食材にはこの3つの要素があると考えます。
例えば、冷え性には生姜がいいとされていますが、もし太っている人が生姜を食べれば、汗が出すぎて逆効果になることも珍しくありません。冷え性の人にとって生姜は薬膳ですが、太っている人には薬膳ではないということになります。
つまり、その人に合ったものが薬膳なのです。ですから、その人の体質をよく考えて食材を選ばなければなりません。
血液をサラサラにする食材
血液をサラサラにしてくれる食材はありますでしょうか。
血管が老化して硬くボロボロになる動脈硬化も血液がドロドロになって血流が悪化している状態も漢方では瘀血(おけつ)といい、血行を促進して瘀血を解消することを活血化瘀(かっけつかお)と呼びます。
そのための代表的な食材を3つご紹介しましょう。
まず、黒豆です。黒豆を乾煎りしてください。10分くらいでもかまいません。もう少し軟らかくしたければ、30分以上の時間をかけてもいいでしょう。
そのままでも食べられますし、お湯に入れてお茶にして飲むこともできます。ごはんと一緒に炊いて豆ごはんにしてもおいしいです。
紅花は、月経痛や月経の停滞などをはじめ、血行不良による顔のシミの解消などに用いられます。お湯に入れてお茶として飲んでもいいですし、チジミに入れたり、ふりかけに混ぜたりしてもいいでしょう。漢方薬局や横浜の中華街に行けば手に入ります。血行をよくするだけでなく、消化薬としても知られているのが山査子(さんざし)です。バラ科の果物の一種ですが、乾燥したものがやはり健康ショップや中華街などで販売されています。
お肉などの脂っぽい食事をしたときや暴飲暴食に最適です。血行がよくなると老廃物も排出されますから、コレステロール値や血圧の低下、ダイエットにも役立ちます。味は甘酸っぱく、お湯に入れてお茶にすることもできますし、果物のジュースやドレッシングに混ぜてもかまいません。パイナップルと同じように肉を軟らかくする作用があり、酢豚に使うこともありますし、私はアップルパイに入れています。
身近な食材で血液をサラサラにするものはありますか?
ニラや玉ねぎは体を温める働きがあり、血行を促進してくれます。冷えからくる血行不良にお勧めです。
ナスにも血行促進作用がありますが、体を冷やす食材なので、生姜やトウガラシと一緒に加熱して食べるといいでしょう。
納豆が血液をサラサラにするといわれていますが、中国にも納豆に似たものがあり、古い文献にも記載されています。
血液をドロドロにする原因
血液がドロドロにならないようにするにはどのようにすればいいですか。
なんといっても食生活です。甘いもの、中でも女性が好きなチョコレートやケーキなどのお菓子、そして、脂っぽいもの、冷たいものは血液をドロドロにします。特に脂は消化を妨げることも知っておかなければなりません。
デスクワークや立ち仕事をしている人は同じ姿勢が1日中続きます。睡眠不足、さらには気の巡りの悪化や冷えを引き起こすストレスも血液をドロドロにする原因です。生活するうえでこれらをできるだけ避けなければなりません。
薬膳の注意点
薬膳を始めるうえで注意することはありますか。
あくまで体質をみながら料理や食材を選んでください。薬膳に使う食材は漢方薬に用いられることもありますが、漢方薬の成分となる生薬になれば薬効は高まる一方で、その分、副作用が出ることもあります。
薬膳の場合、穏やかに効いていきますから、副作用の心配はほとんどありません。ただし、例えば、体を温めるには生姜がいいと聞いて、毎日、生姜を食べた結果、血便が出た人もいます。先ほど紹介した山査子は消化を促進しますから、胃酸過多の人はとりすぎないようにしたほうがいいでしょう。何ごとも程度の問題です。
自分に合ったもの、そして旬のものをとるようにしてください。旬の食材は大地から気をもらっているので、一番いいときなのです。
杏仁美友先生プロフィール
国立北京中医薬大学日本校・中医薬膳専科卒、遼寧中医薬大学付属日本中医薬学院・国際中医師コース卒。国際中医師。中医薬膳師。漢方&薬膳アドバイザー。一般社団法人・薬膳コンシェルジュ協会代表理事。「おいしいのにやせる!ダイエット薬膳」「薬膳ごはん」など著書多数。