【2016年3月】特別インタビュー
班目健夫(青山・まだらめクリニック 自律神経免疫治療研究所 院長)
「治りますよ。
体から冷えを取れば」
めまいやのぼせ、頭痛、肩こりなどの不定愁訴を抱えている人はたくさんいますが、なかなか決め手になる治療法はありません。
これらの症状に自律神経がかかわっており、その自律神経は冷えと表裏一体の関係にあります。
不定愁訴だけでなく、がんやアトピーなどの治療において抜群の実績をあげている青山・まだらめクリニックの班目健夫先生に自律神経と冷えについてお話をお聞きしました。
あらゆる臓器や器官に働く自律神経
そもそも自律神経とはどのような働きをしているのですか?
誰しも心臓は常に動いているはずです。このように意思とは関係なく働いている神経を自律神経と呼びます。自律神経によって動いている臓器は心臓だけではありません。呼吸をつかさどる肺や消化を担当する胃、さらには、体温調節などにもかかわっています。
では、自律神経失調症とはどのような病気なのでしょうか?
多くの臓器や器官に自律神経がかかわっていますから、症状はさまざまありますが、いくら検査をしても、これらの臓器などには異常が見つからないことも多く、「異常なし」となってしまいます。
自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、日中、活動いるときは交感神経が優位になり、夜になってくつろいでいるときは、副交感神経が優位になるのが普通です。
この2つの神経のバランスが崩れると、さまざまな不調が現れてきます。数多くの病気の原因になっていると言ってもいいでしょう。
冷えと自律神経の関係
自律神経のバランスが崩れる原因は何ですか?
忙しさやストレス、睡眠不足による生活の乱れが原因として考えられます。交感神経が優位な状態が続くと、血管は収縮したままになり、血流が悪化し、体が冷えやすくなるのです。
体全体の血流が悪くなると、各臓器や器官へ酸素や栄養分が運ばれなくなりますから、やはりこれらの機能が低下してしまいます。自律神経失調症と冷えは表裏一体の関係といえるでしょう。
体を温めて自律神経のバランスを整える
自律神経のバランスをとる方法はありますか?
うちのクリニックでは、刺絡や気診、灸などを用いて治療を行なっています。自律神経失調症だけでなく、がん患者さんの症状の軽減や延命などに高い効果をあげてきました。安保徹先生で有名になった自律神経免疫治療も独自に工夫、改良して行なっていますが、爪を揉むと良いと思って、自宅でやる人もいますが、簡単にできるわけではありません。 私がお勧めしているのは体を温めることです。体を温めることで副交感神経を優位にできます。
具体的な方法を教えてください。
局所を効果的に温められる湯たんぽをお勧めします。特に、太ももの前面やお腹、お尻、二の腕の外側などを温めてください。
使い捨てカイロでは熱量が足りません。2リットル入りの湯たんぽに沸騰したお湯を入れて、3〜4時間おきにお湯を入れ替えます。
ただし、汗をかかないように気をつけなければなりません。もし、額から汗が落ちるほどの汗をかいたとしたら、全身で120グラムの汗が出たことになります。湯たんぽで得られる熱量は約13万キロカロリーになりますが、120グラムの汗の気化熱によって約8万キロカロリーも失ってしまうのです。せっかく体を温めても、足を引っぱることになります。
入浴は体全体を温めるという点で欠かせませんが、事前に体を温めてから入るようにしてください。体が冷えたまま入浴すると、温度差が大きいため、体の芯まで温めることができず、思ったほどの効果は得られません。
とにかく、常に体を温めることを念頭に生活することが大切です。
冷えの解消でアトピーもリウマチも改善
会員さんの中にはアトピーに悩んでいる方が多いのですが。
うちへ来るアトピー性皮膚炎の患者さんの約95パーセントは治っています。
アトピーの患者さんは体が冷たい。水に濡れた肌着を常に着ているようなものです。よって、血流が悪くなり、皮下に水がたまります。そのたまった水が神経を刺激してかゆみが出てしまうのです。
冷えを取るとどのようにしてアトピーはよくなるのですか?
体を温めただけで、ひと晩で3キロほど体重が減ることもあります。それだけたまった水分が排出されるからです。神経を刺激する物質が減るわけですから、かゆみは自然と取れていきます。
会員さんの中にはリウマチで悩んでいる方もいるのですが。
リウマチも治ります。内臓に血液がまわっていないのです。これも体を温めることで改善できます。リウマチもアトピーもステロイド剤を使いますが、この種の病気には何よりも冷えを解消するために体を温めることです。
肩こりや腰痛、膝痛はどうでしょうか?
筋肉の血流が滞っているから、凝りが出るわけです。凝っている部分をマッサージする人がいますが、かえって筋肉は硬くなります。まず温めることです。
また、筋肉は第2の心臓といわれており、中でも、手足の血流は筋肉の働きによって促進されています。
筋肉を温めることで、血液の流れがよくなり、凝りだけでなく、その他の症状も改善されるのです。湯たんぽによる加熱だけでは筋肉の凝りは十分には改善できないので、ついで適切な方法で筋肉の異常な凝りを改善させることが必要になります。この適切な方法が難しいのですが、ようやく理論的に完成に近づいてきました。
班目健夫先生 プロフィール
1954年、山形県生まれ。岩手医科大学医学部卒。医学博士。東京女子医科大学附属東洋医学研究所、同大学附属青山自然医療研究所クリニック講師などを経て、2011年、青山・まだらめクリニック 自律神経免疫治療研究所を開設。「免疫力を高める『副交感神経』健康法」「『首のスジを押す』と超健康になる」など著書多数。