【2015年9月】冷えが引き起こす不調や病気を抱える患者さんの「駆け込み寺」
南雲久美子先生
独占インタビュー
夏の冷えが起こす秋の不調にご用心
グッドコンディションは温かいお布団から
夏に油断して体を冷やしていると、秋になってさまざまな不快な症状となって現れてきます。夏の終わりから秋を迎えるこの時期にしっかりと予防に努めましょう。冷えが引き起こす不調や病気を抱える患者さんの「駆け込み寺」となっている目黒西口クリニックの南雲久美子院長にお話を伺いました。
秋になるとどのような患者さんが来られますか。
めまいや不眠、頭痛、肩こり、胃腸障害などが増えてきますが、中には、「自分の体が自分のものではないようだ」と苦しみを訴える人もいます。
このような患者さんたちは耳鼻科をはじめとして、いろんなお医者さんをまわって、そこで原因がわからなかったり、治らなかったりしてうちへ来られるのです。多くの場合が、夏の間に身体を冷やしていたことによるもので、自律神経の異常から起こっていると考えられます。
なぜ、それらのお医者さんでは原因がわからないのですか。
現代医療(西洋医療)が用いる画像診断や血液検査などでは原因がわからないのです。ほとんどのお医者さんが対症療法の薬を処方して終わりになります。
冷えに伴う症状を治療するには、症状から体全体をみる東洋医学が向いているでしょう。
暑い夏に身体は冷えるのですか。
エアコンや冷たい飲み物や食べ物、入浴をせずにシャワーで済ませることなど、夏は冬よりも体を冷やす要素がたくさんあります。しかも、外気温と室温の差は冬よりも大きく、台風が来ることによる気圧差も見逃せません。また、冷えを感じないことも多く、冬よりも厄介だといえるでしょう
冬にはお腹をこわしたり、しもやけになったりする人が現れますが、どちらかといえば、普段から体が弱く、もともと冷え症の人に症状が出てきます。東洋医学でいうところの虚証の人です。
ところが、秋には、もともと元気な実証の人を除いて、多くの人たちに症状が現れます。
それらの症状を予防するにはどうすればいいですか。
とてもシンプルです。体の外から中から冷やさないこと、運動、良い睡眠となります。
外から冷やさないようにするには、首のうしろ、お腹、足首に気をつけてください。
中から冷やさないためには、体を冷やすものを飲んだり食べたりしてはいけません。
たとえば、コーヒーや緑茶は、ホットでもアイスでも体を冷やします。体を冷やさないためには、温かい紅茶やプーアール茶を飲んでください。
たいていのお酒は体を冷やしますが、日本酒は冷やしません。寒いときに、鍋やおでんを食べながら日本酒の熱燗を飲むことは理にかなっているのです。
運動は体温を作り出す下半身の大きな筋肉を鍛えます。スクワットやウォーキング、階段の上り下りがいいでしょう。有酸素運動は心臓や血管を強くしますし、骨粗鬆症やロコモティブシンドロームの予防にもなります。1回で30分、週に4回以上が理想です。
良い睡眠とはどのようなものですか。
やはり温かいお布団で体を温めることです。ただし、電気毛布は感心しません。お布団の中が乾燥するからです。乾燥すると、鼻も乾きますし、皮膚にも悪い。
特にお腹を冷やしてはいけません。腹巻きは良いと思います。夏ならば、お腹だけには薄いものをかけるようにしてください。
靴下を履いて寝る人もいますが、指の股に汗をかきますから、それが蒸発すると気化熱で足先を冷やしてしまいます。履くなら五本指の靴下がいいでしょう。
冷えについて他に注意する点はありますか。
過緊張型の冷えが増えてきました。忙しさやストレスなどから過緊張状態になると、自律神経の交感神経が優位になり、血行が悪くなります。それで体が冷えるのです。
手足など部分的に汗をかき、イライラや不眠、パニック、うつなどが出やすくなります。几帳面な性格の人に多くリラックスが下手です。
入浴するときも、温度が熱すぎると交換感神経優位になりますから、温度を低くしたり、半身浴をしたりするといいでしょう。
南雲久美子先生 プロフィール
1982年、杏林大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学第二内科入局、北里研究所附属東洋医学研究所で東洋医学を学ぶ。96年、東西医学を融合して治療を行う目黒西口クリニックを開業。著書は「冷え性・貧血・低血圧」など多数。
http://www.meguro-kanpo.com//
『冷え症・貧血・低血圧』(主婦の友社)
頭痛や肩こり、不眠などを引き起こす冷え症。加えて、女性に多い貧血と低血圧などの生活療法や食事療法、入浴方法などを紹介。
『名前のない病気 不定愁訴』(家の光協会)
東洋医学の専門医として、不定愁訴、自律神経失調症を4つのタイプに分けて、原因や治療法、日常生活の注意点を解説する。